『叢 草双紙の翻刻と研究』 第32号 発行

東京学芸大学の、近世文学研究「叢」の会から『叢 草双紙の翻刻と研究』第32号が発行された。B5判・168頁のボリュームである。黒石陽子氏の「黒本・青本『曽我一代記』における「富士の巻狩」の検討」をはじめ、8点の論考が収録されている。

■編集後記に、
「・・・今号は合計八名の研究論文を載せることができました。今号では、昨年度の科学研究費研究成果報告書「近世中期文化を視野に入れた初期草双紙の総合的研究」 (平成二十二年三月)の方針を継ぎ初期草双紙の絵の特性を考察する論文、草双紙の創造過程・作意を追求する論文が多くあります。従来のような基本的な翻刻と研究の姿勢を保ちつつ、草双紙を見る新たな視点を見いだしていければと思っております。・・・」

とあるように、今度の研究成果は、基本的な作品の翻刻紹介もあるが、それらの成果の上にたった論考が多い。

●この学術研究誌は、1979年に、東京学芸大学の小池正胤氏を中心して創刊された。30年以上前である。毎号、毎号、地道に大量の草双紙作品を翻刻紹介し解説を加えてきた。その成果は、2006年8月、東京堂出版発行の『草双紙事典』としても実を結んでいる。

●私は、近世文学会で、この研究誌に出合って、即、定期購入した。以後、寄贈されているが、30余年の間には、資金難ゆえ送料は出してもらえないか、という事もあった。今度の第32号には「平成22年度 東京学芸大学重点研究費C」に基づく研究成果であると記されている。研究意欲はあるが、研究者もカスミを食って生きてはゆけない。

●この度の、第32号も、継続することの尊さをも痛感する研究成果である。

★詳細目次→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■『叢 草双紙の翻刻と研究』第32号