図書館の貸し出し と 印税

●菊池氏の「エッセイ」で、次のようなニュースを知った。
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図書館貸し出し猶予を…小説家が巻末にお願い
 気鋭の小説家、樋口毅宏(たけひろ)さん(39)が、25日発売の「雑司ヶ谷R.I.P.」の巻末に、公立図書館での貸し出しを、新刊の売れ行きに影響が大きい刊行から半年間、猶予するよう求める一文を掲載した。
 図書館がベストセラーを大量購入して貸し出す現状については、複数の作家が「無料貸本屋」と異議を唱えてきたが、作家が自著に、このような一文を載せるのは「おそらく前例がない」(版元の新潮社)という。
 樋口さんは「さらば雑司ヶ谷」で一昨年デビュー。続編となる新作は、昨年1年の大半を執筆にあてた力作だが、定価1600円で初版6000部のため、印税は96万円。一方で、昨年12月刊の自著「民宿雪国」が、ある図書館で44人もの貸し出し予約が入っていることを知り、それが今回の行動のきっかけとなった。
 日本文芸家協会は、図書館の貸し出し実績に応じた補償金を著者へ払う制度の導入を国に求めているが、実現していない。
 樋口さんは「(増刷されなければ)僕の昨年の労働の対価は、印税の96万円だけ。このままでは、皆が卵(本)をただでもらううち、鶏(著者)はやせ細り、死んでしまう」と話している。
(2011年2月25日16時08分 読売新聞)
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●この読売新聞の記事は、現在の図書館と、著作者の利益に関する問題として、これまでも、問題になっていた。樋口氏の年収は、この本が増刷されなければ、96万円だという。原稿執筆で生活している人々にとっては、切実な問題である。

●私は、この点に関して、平成19年(2007)に、文春新書から『旗本夫人が見た江戸のたそがれ』を出した時に、興味を持った。各図書館の所蔵冊数と借り出し予約件数が毎日表示されていた。さいたま市図書館の2007年12月16日の所蔵数は2冊、予約件数は8件、札幌市立図書館の2008年1月18日の予約件数は20件だった。その他の図書館はデータを記録していないが、予約件数10件前後が多かった。

●今回の、樋口毅宏氏の「図書館貸し出し猶予を…」の表示は1つの問題提起である。

■『雑司ヶ谷R.I.P.』