懐かしい校正刷

●今朝一番で、宅急便が届いた。ドサリと重い袋を開けると、476頁の校正刷の三校であった。私が再校を済ませて返送したのは、2月13日、平成22年であるから、ちょうど1年ぶりの対面である。ゆえに懐かしい校正刷である。私は、これまで60冊以上の本を出版してもらった。1冊1冊、条件は異なるし、校正の仕方も、出版社によって流儀があるので、それぞれ異なる訳である。しかし、再校返校から三校出校までまるまる1年間かかったのは、初体験であった。

●現在、他の本も雑誌も進行中であり、何人かの分担であるから、校正の進行も大変である。現役の方々は、今、最も多忙な時期である。卒論の査読・評価、後期試験の実施・採点、入試の実施・採点、卒業業務、年度末業務。古典本文の校正というような、地味で慎重さを要求される仕事には、殊に、この時期は向いていない。そんな中で進めて下さる。皆さんの御努力に対して、本当に頭が下がる。

●私は、校正は、大学卒業直後に、腰掛の予定でお世話になった桃源社の編集部でも教えてもらった。この時、エディタースクールの講義も受講した。この出版社の出版内容は大衆小説であったが、光文社のカッパブックスが〔誤植の無い本〕を謳っていたのに倣って、ミスの無い本を目指して、頑張った。大衆小説だからこそ、ミスが無いようにすべきである、という考えであった。仮名草子を参考に、ルビの付け方も工夫した。また、誠文堂新光社の辞典部では、漢字の1点1画まで注意して原稿を書き、印刷所の活字そのものを疑う、という姿勢で校正することを指導された。校正はシンドイけれど、良い本を出すために、大切な仕事である。

■これは、『芸文稿』第4号の初校・校正刷