出版界の不振

●私は、日本の出版界に興味を持ち、現役時代から出版情報を提供してもらっている。現在も、殆ど毎日送信されて来る情報は、このところ芳しくない。大手出版社の成績も減収が目立つ。私の独善的推測では、日本全体の景気は、やや上向きだと思う。その根拠はニコンの株価が1939円と2000円に接近し出したからである。

●出版科学研究所の25日の発表によると、2010年の、取次ルートによる書籍・雑誌の推定販売金額は、1兆8748億円だったという。私が講義していた頃は、2兆4000億円だった。これは、大手某製鉄会社の半期の売上げに相当する。これを約4400の出版社で売り上げているのである。いかに出版社が零細企業であるかが分かる。それにしても、1990年頃から下がり続けていて、この傾向が止まらない。

●特に注目されるのは、新刊書籍の数が激減している、ということである。これまで、出版界は不況でも本は出し続けていた。2010年は、7万4714点で、前年比、4.9%減だという。25日付、朝日新聞夕刊に掲載された新刊点数のグラフを見ても明瞭である。出版社の体力が落ちたり、取次が抑制している点に原因があるというが、あるいは、電子書籍の影響もあるかも知れない。今後の推移に注目したい。

朝日新聞、夕刊、1月25日