氏家幹人氏の新刊『江戸のエロスは・・・』

歴史学者氏家幹人氏の新刊『江戸のエロスは血の香り』(2010年11月30日、朝日新聞出版発行、1500円+税)が出た。「週刊 名将の決断」に連載していたものを改題し、加筆・再構成したものだという。私は、今回、この本で初めて読んだが、このテーマのもとに、『学海日録』『当世書生気質』『葉隠』『可笑記』『耳嚢』『甲子夜話』『馬琴日記』『藤岡屋日記』『松屋筆記』・・・などの資料を使って、平易に紹介したものである。この中に『井関隆子日記』も利用されていて、この日記を発見し、紹介した私としても嬉しい。

●幕末の旗本夫人・井関隆子は、目の前の江戸の様子を、克明に熟達した文章で書き止めていた。彼女は、今、目の前の事を記している私を見て、意味の無いことをすると思う人もいるかも知れないが、100年・200年と経てば、きっと、江戸時代を知る手掛かりになるだろう、と述べている。私がこの日記、全3巻を出したのは、昭和53年で、30年前になるが、現在、多くの方々に読まれ、活用されるようになった。隆子が没して、166年が経過した。彼女の考えは正しかった。

●今回の氏家氏の新刊では、『井関隆子日記』の天保11年11月17日の条に基づいて、「四十六 恋する女の名は兄嫁」の項が紹介されている。同じ旗本の結婚の悲劇が書き止められたものである。隆子は、この話を、まるで小説のように書いている。彼女の文才が充分に発揮された部分でもある。

氏家幹人氏著『江戸のエロスは血の香り』