電子書籍無断販売、文藝春秋のコメント

●11月19日付、朝日新聞文藝春秋社長の平尾隆弘氏が、“「海賊版」への対応に疑問”と題して寄稿している。東野圭吾氏の直木賞受賞作『容疑者Xの献身』の海賊版が、アップルストアで、著者・出版社に無断で販売された事への、出版社の責任者としての発言である。この海賊版に関しては、11月9日・10日と朝日新聞で報道され、私も、前々から危惧していた事でもあり、このブログで書き込んでいる。

平尾隆弘氏の記事によると、東野圭吾氏の直木賞受賞作『容疑者Xの献身』は、2005年8月に文藝春秋から刊行され、単行本・文庫本合わせて250万部を超える大ベストセラーだという。この作品の海賊版がアップストアーに出現したのは、11月3日、文春の担当者は実際に購入して中身を確認し、明らかに違法な商品であることをアップルに警告して、削除を要請した。同時にユーザーレビューでも、海賊版ゆえ購入しないよう訴え、制作者には販売を中止するよう求めたという。その結果、4日午前10時以降はアップストアーから購入できなくなったという。これによると、1日間は海賊版がアップストアーで販売されたことになる。

●私は11月10日に次のように書き込んだが、アップルはきちんとしたガイドラインを公表して対応しないと、今後、世界の出版界・著作者と共存できないだろう。

■11月10日の新聞報道によると、今度は、日本語書籍も、著者や出版社に無断で、アップストアで販売されたという。東野圭吾氏の『容疑者Xの献身』で、日本語作品の海賊版が発覚したのは、これが初めてらしい。発行所の文藝春秋社が、そのソフトの購入者評価欄に、この本は著作権を侵害しているので買わないで欲しいとコメントしたところ、削除されたという。この本は、今月2日に、115円で販売しているのが確認され、削除されたのは、4日の午後だという。1本売れるごとに、約80円が制作者、約34円がアップル社に支払われた計算になるらしい。アップルジャパンは販売本数を明らかにしていないという。
電子書籍の販売をめぐって、著作権・出版権が侵害されている。早急の対応が必要である。

朝日新聞、2010年11月19日

東野圭吾氏の『容疑者Xの献身』 文春文庫