刻々修正されるテキスト

●今日の朝日新聞夕刊に、「電子書籍 作家動く」として、最近、電子書籍に参加する作家が多くなったと報じている。宮部みゆき氏が8月に中央公論新社から、iPad用アプリとして出したのは、イラストが動いたり、弱視者や高齢者のために文字が大きくなったりする利点がある、と指摘している。大沢在昌氏・福井晴敏氏も電子書籍に参加いるという。林真理子氏も3作品を小学館から電子書籍として出すらしい。林氏の場合は、紙の本の売れ行きが低迷しているのが理由だという。

福井晴敏氏は、来春に経済小説講談社から出すが、月1回が目安の連載で、配信済みの内容を経済情勢に応じて修正するらしい。1度購入した読者は更新版も無料で読めるようにするという。それは結構であるが、テキストクリティークの立場からすると、厄介な点も生じるのではないかと予想される。

●私など、近世初期の仮名草子作品で、同一作品のテキストが、4種類ある場合、本文批判をして、優れたテキストを決定して、その本文に拠って研究をしている。従来の紙の本の場合、やりやすいが、電子書籍になり、刻々修正されるとなると、研究する側もその対応に留意しなければならない。

朝日新聞 11月18日夕刊