碩学の論考

●このところ、数日間をかけて、前田金五郎先生の論文を拝読した。江戸時代語に関する論考で、200字詰原稿用紙120枚の労作である。先生には、『岩波古語辞典』『好色五人女全注釈』『西鶴語彙新考』『好色一代女全注釈』『西鶴連句注釈』『近世文学雑考』『近世文学雑記帳』などの膨大な御著書がある。このような蓄積を持たれる90歳の碩学の論考を読み進める私は、次々と衝撃の波に打ち砕かれた。

●私が、東横線学芸大学の前田先生のお宅に、初めてお伺いしたのは、もう随分前のことである。仮名草子研究を志した頃、表彰先生の御紹介を頂いて、島本先生と共にお伺いした。もう40年も前のことである。それから、何か問題が生じる度ごとに、先生の御指導を賜った。

●前田先生は、こちらから雑誌論文をお送りしたり、拙い著書を差し上げた時、すぐに御返事を下さり、いずれゆっくり拝見、と簡略な内容である。しかし、後日、何かの折に、厳しく温かい御批評、御注意をして下さった。先生は、今90歳である。出来得ることならば、75歳の私も、先生のような情熱を持ちながら、80歳まででも生きられたら幸いだと、密かな願望を抱いた。

■『岩波古語辞典』補訂版 平成2年2月8日発行

■『好色五人女全注釈』 平成4年5月15日発行

■『西鶴語彙新考』 平成5年1月30日発行

■『好色一代女全注釈』 平成8年10月25日発行

■『西鶴連句注釈』 平成15年12月20日発行

■『近世文学雑考』 平成17年11月20日発行