追尋する志

●24日の土曜日、久し振りに池袋へ出て、若い仮名草子研究者にお会いした。E氏は、いま、1つの仮名草子作品の実態を探ろうとして、四苦八苦しておられる。この酷暑のさなか、東に走り、西に尋ねて、1つの事実を突き止め、その底部に潜む真実に迫ろうとしておられる。ヒト事ながら、こちらもワクワクしてしまう。

●25日は研究会があり、連日の上京(少し大げさ)。今月の例会では、私が発表した。20年以上かかえてきた疑問に終止譜をうとうと意気込んだ(これも、さらに大げさ)。

●24日、帰宅したら、中島次郎氏から郵便が届いていた。『明治大学 日本文学』第36号に掲載の「明治二十九年の百物語――森鴎外「百物語」の周辺資料――」という論文。自分の研究発表が終わったので、拝読した。鴎外が明治44年10月に『中央公論』に発表した短編『百物語』と、実際に行われた百物語の会との関係を明らかにしようとするものである。中島氏は創作『百物語』と実際の会との関係を解明するために、当時の雑誌・新聞の記録を丹念に調査して提出しておられる。当時の新聞・雑誌の閲覧は、原物・復刻・マイクロ・データーベース、と多種にわたる。それらを追尋して、より正確な本文に辿りつこうと、努力しておられる。まるで、仮名草子の諸本調査を思わせる。私は、この姿勢に感激した。中島次郎氏は、仮名草子研究者である。
■■。『明治大学 日本文学』第36号