『桜山本 春雨物語』  特装本

●私は、昭和61年に、桜山文庫の所蔵者・鹿島則幸氏の要請によって、『桜山本 春雨物語』の複製本を出した。この本には、既に2つの翻刻本が出ていたが、それらは、いずれも翻刻と言う制約のために、十分に底本が表現されておらず、学問的には複製以外に方法が考えられなかったからである。しかも、原本は、墨筆と朱筆の2筆であり、これを後世に伝えるためには、2色による複製しか考えられなかった。この点を出版社・勉誠社の池嶋洋次氏にお願いして、墨・朱の2色刷で出版して頂いた。

●この種の学術出版は、出して頂くだけでも有り難く、印税などは望むべくも無い。しかし、貴重な原本の複製を許可して下さった鹿島氏には、ただ、謝辞だけでなく、何か形で謝意を表したく、思いついたのが、市販本とは別に、特別装丁の本の作製であった。出版社の編集者にお願いして、製本前の刷本を3部特別にもらって、栃折工房で、パッセカルトンの作製をしていた、安井氏に依頼して、特装本を3冊作製して頂いた。そして、その特装本第壱号を鹿島氏に献呈した。これは、研究者として出来る一つの処置だと思っている。

■■『桜山本 春雨物語』の市販本と特装本
左から、市販本、特装本第弐号、特装本第参号。


特装本第弐号の奥付、書家・瀧島先生筆。

特装本第参号の奥付、書家・瀧島先生筆。

市販本の 花布 機械織。本の綴じも機械。

特装本第弐号の 花布 手織。本も手で綴じる。

特装本第参号の 花布 手織。この綴じの模様は、天地が同じ。

特装本のみに入れられた写真など(以下同じ)

写真等の説明は、3部のみの印刷。



「櫻山文庫」の蔵書印。特別許可を得て押印。