悉皆調査

●秋山敬氏の労作『棟札の基礎的研究―主として甲斐国の事例を素材として―』の刊行を喜び、その学恩に感謝していたら、可児市市史編纂室から『可児市の神社 棟札集成』が発行された(平成22年3月18日発行)。両者ともに、限定された範囲ではあるが、目標は悉皆調査であり、諸事情によって未調査のものが残ったにしても、調査結果は信頼すべきものとして結実した。私は、この調査・研究の成果を、相次いで手にする事ができた感動と感謝を忘れることは無いだろう。

●私の研究対象は文学であり、小説や詩や歌や句や随筆や評論などの作品を読み、そこから作者や詩人の伝えた想いや感覚やを汲み取り、感受し、その作品の価値評価などをすることを目標にしてきた。しかし、時と場合によっては、医学にも天文学にも歴史学にも無関心ではいられない。それが、文学研究のむつかしい点でもある。今回、棟札に興味を持ったのも、仮名草子作者の伝記を調べていての事である。もう20年の余も前からの疑問に関して、今、この2つの労作の御蔭で、解決への光がさしてきた。私は、文学関係の研究でも、テーマによってではあるが、常に悉皆調査を心掛けてきた。中途半端な調査では、中途半端な結論しか導き出せないだろう。

●改めて、秋山敬著『棟札の基礎的研究』と、可児市市史編纂室編『可児市の神社 棟札集成』の学恩に感謝する。

可児市市史編纂室編『可児市の神社 棟札集成』の詳細目次 →http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■可児市市史編纂室編『可児市の神社 棟札集成』