棟札研究の労作

●「むなふだ【棟札】建築物の棟上(むねあ)げまたは改築の時、工事の由緒・年月・建築者・工匠などをしるして棟木に打ちつける札。古くは棟木の下面に直接書いたものが多い。むねふだ。」(『日国』2版)

●一般には、余り知られていないし、多くの人が興味を持つものでもないだろう。しかし、私は非常に興味を持ち、何冊か研究書も目を通し、この分野で継続的に調査をして報告書を出している、山梨県史編纂室へ問い合わせてみた。棟札の調査担当者のお話を伺いたいと思ったからである。しかし、そのチームは解散し、詳細は分からないという返事。そのうち、国会図書館へ行って、5冊の報告書を閲覧しようと思っていた。

●先日、朝日新聞の広告で、岩田書院から、秋山敬氏の『棟札の基礎的研究―主として甲斐国の事例を素材として―』の刊行を知った。すぐ取り寄せて見たら、私の求めていた研究書であった。著者は、山梨大学教育学部を卒業と同時に県立甲府南高校教諭となる。しかし、2年後に県職員となり、やがて県史編纂室に移り、編纂室長となり、長年、棟札調査を担当された。その成果として、2010年2月に『棟札の基礎的研究―主として甲斐国の事例を素材として―』を公刊されたのである。

●この著書を読んで、棟札の実状が、本当によく分かった。山梨県内の棟札約3500点をデータ化し、282の表にまとめあげ、その調査データを基礎にして分類し、分析した結果が本書である。研究の1つのお手本を手にした、という感動である。

★『棟札の基礎的研究』の詳細目次→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■秋山敬氏著『棟札の基礎的研究』