大禹は寸陰を惜しむ

●現代破体書道界の第一人者、松本筑峯氏が他界された。平成21年12月22日、享年91歳であった。心から御冥福をお祈り申し上げる。

●松本筑峯氏は、大正7年(1918)茨城県下妻市に生れ、東京美術学校東京芸大)卒業。昭和30年、東洋書道芸術学会を設立。破体書道の研究・創作・指導に生涯を捧げられた。

●破体作品「大禹惜寸陰」は、松本筑峯氏の絶筆。中国古代の伝説上の聖王・禹は大聖人であったけれど、なお、わずかな時間も惜しんで努力した。まして凡人の我々は、時間を大切にして努力しなければならない、という意味。出典は『晋書・陶侃伝』。

●この作品は、第55回「東洋書芸展」(2010年2月12日〜19日、東京都美術館)に展示されている。松本先生の御指導を受けて、研鑽している、石川清玉氏から案内を頂いた。今回、私は多忙ゆえ、上野へ行って鑑賞することが出来ないが、頂いた『方円』(通巻705号、2010年3月1日発行)で拝見した。なお、石川清玉氏の作品は「人生感意気」である。

●91歳で御他界の松本先生の絶筆が、「大禹惜寸陰」である点に、門下への念いがヒシヒシと感じられ、門外漢の私まで、身が引き締まる。かつて、石川氏に差し上げた私の手紙を御覧になった松本先生が、「ホー、味のある、よい字を書く方ですね」と申された、と伺った。もちろん、お世辞に違いないが、破体書道の大先生だけに、忘れられない。

■■松本筑峯氏の絶筆「大禹惜寸陰」

■■石川清玉氏の作品「人生感意気」