作家の日記 2009年

●『新潮』2010・3 で「小説家52人の2009年日記リレー」を掲載している。大江健三郎の「二〇〇九年一月一日」から始まって、田中慎弥の12月31日まで、52人の現代作家が、日記を書いている。早速、読んでみたが、実に面白い。もちろん、私にも、好き嫌いがあるので、好きな作家のみ、拾い読みした。大江健三郎金原ひとみ島田雅彦辻原登・・・筒井康隆宮本輝柳美里平野啓一郎加賀乙彦・・・高村薫・・・宮尾登美子阿部和重高橋源一郎・・・

●もちろん、日記とは言っても、編集から依頼された創作日記である。でも、それぞれに、その日、その日の事実に基づいて、それを素材にしているので、まんざらのフィクションでもないだろう。それぞれの現代作家の日常が伺えるし、創作姿勢も推測できるし、現実の社会現象への反応も面白い。

●私は、学生時代に、堀辰雄の創作姿勢と作品の内実と現実の関係を、小田切秀雄先生の演習のレポートにまとめた事がある。これは、古今東西の共通事項であるが、作家ほど、ウソの上手い人種はいない、堀辰雄の手紙などをマトモに無批判に、つまり、資料批判も加えずに、作品論に利用すべきではないと主張した。

●作家に限らず、人間など、そんなものであろう。ただ、作家は、事実と虚構の組み合わせに長けているので、その辺を注意、チュウイという事だろう。

■■ 『新潮』2010・3