長谷川卓 の 最新作 『戻り舟同心 逢魔刻』

●長谷川卓の最新作『戻り舟同心 逢魔刻』(学研M文庫、2010年1月26日発行、629円+税)が出た。「戻り舟同心」シリーズの第3作、書下ろし作品である。元同心68歳、元御用聞き72歳・77歳、つまりリタイアした人物が、戻り舟として、江戸の難事件にチャレンジする。燻銀(いぶしぎん)の同心・伝次郎を中心に描かれる。

●文化2年(1805)11月3日、七ツ半(午後5時)頃、当勘堀沿いの辺りで物語は始まる。元御用聞きの多助は、人さらいに出合う。77歳の、元御用聞きの血が騒ぐ。
「しかし、血は騒いだとて、足が素直に出る訳ではない。縺れそうになった。」
このあと、68歳の伝次郎と72歳の鍋寅が追跡するが、犯人は取り逃がす。ふたりとも、息が上がってしまった。

●私は、この小説の書き出しを読みながら、思わず、にやりと笑ってしまった。私も、今、74歳、犯人を追跡するには、年を取り過ぎている。今日の、朝日新聞には、24日の自民党大会の折の写真が出ていた。75歳になる参議院のドン青木幹雄氏が、公認候補として25番目に紹介され、決意の挨拶はしたが、谷垣総裁と握手するのを忘れたシーン。党内の若手から世代交代の批判があり、青木氏も上がっていたのだろう。

●長谷川卓の新作は、今、読み始めたばかりであるが、このような、リタイア組が、永尋掛りとして、難事件に取り組んでゆく様子が、現在の社会とも関連し、面白さがある。老人力とも言われるが、リタイア組にも、経験が豊かだけに、取柄はある。

■■長谷川卓 最新作『戻り舟同心 逢魔刻』