出版界の現状 返品の問題

●1月14日の日記で、電子書籍市場の5年後の予測は、3000億円に達する可能性がある、という記事を紹介した。この額は出版界にとってどんな意味を持つのか。

●1月25日の朝日新聞の報道によれば、出版科学研究所は、2009年の書籍・雑誌の、取次ルートにおける推定販売金額は、1兆9356億円で、21年ぶりに2兆円を割ったという。示されたグラフによれば、96年ころは25兆円を上回っていた。3000億円の意味も重大であることがわかる。特に売上げの60%を占めている雑誌は12年連続でマイナスで、定価値上げで、売上げ減を補っているという。

●日本の出版界の悩みの種は、返品率の問題である。多くの書籍・雑誌は、委託販売で、出版社→取次→書店→読者 というルートをたどる。書店は売残りを返品できる。この率が大きいので問題は深刻である。09年の書籍の返品率は40.6%だという。配本され返品される輸送費だけでも大変である。

小学館講談社は責任販売制を個別の商品に適用して、書店のマージンを増やす代わりに返品は出来ない方式を採用して、好調のようである。また、取次のトーハンは、出版社から本を買い取って、書店のマージンを40〜50%とする方式を立ち上げたという。

●日本の出版界の、委託販売という制度は、出版社にとっても、読者にとっても、大きなメリットがあり、出版文化を支えている。しかし、返品率の問題では、常に悩まされている。この状況に対して、出版社のみでなく、取次会社も新しい制度を模索し始めているが、電子書籍市場の問題と共に、新たな対応が必要になっている。

■■大手取次・トーハンの社員も店頭販売を行った。
朝日新聞・夕刊 2009年1月27日