お他人様の 日記

●私は、お他人様の日記には余り興味が無い。だから、人様のウェブ日記やブログは殆ど読まない。ところが、この年末年始は、お他人様の日記を読む事に没頭した。それも、スラスラ、スイスイと読むのではなく、じっくりと1字1字吟味しながら読むのである。長い間、古典研究をしてきた方の日記で、少し文語体風の特殊の文体である。この日記を、活字になる前に、原稿段階で読んだのである。これは、妙な体験である。もちろん、記者が推敲に推敲を重ねた末に書き上げられた日記である。活字になれば、客観化されているので、また、違った感覚になるが、直筆だけに、記者と私だけの世界であり、これは、なかなか特異な経験である。

●もう40年も前に、同じような経験をした。これは江戸時代の女性の日記で、自筆の写本であった。この日記も、推敲に推敲を重ねた末の日記であった。記者と私だけの世界が1年間以上も続いた。これも妙な経験であった。やがて、研究も進み、その執筆者の事が明らかになってゆき、1人の女性が独立し、肉体化して、動き出していった。それが、源隆子であり、井関隆子であり、その日記である。

●この年末年始、熟読した日記も、いずれは、活字となって、多くの人々に読まれるようになるのだろうが、日記にもピンからキリまであり、私のウェブ日記のように泡沫のように消えてゆくものもあり、『井関隆子日記』のように、長く、多くの読者に読まれる日記もある。

■■『井関隆子日記』特装本 ルリユール 栃折工房 門下 安井氏造本
 上・中・下 3巻の表紙 子牛の皮革を使用

 ■見返しには武鑑の井関家の部分を透かしで入れる

 ■上巻には『分間江戸大絵図』安政6年刊、の原本

 ■中巻には『袖玉武鑑』天保12年刊 の井関縫殿頭の部分 の原本

 ■下巻には 『江戸暦』天保14年刊 の巻頭 の原本