足が震えるような出来事

●私は、昨日、ウェブ日記の読者さんから1通のメールを受信した。開いて見ると、古都鎌倉で古美術商を経営している方からであった。古文書を一山、競り落として調べたところ、中から鈴木重嶺関係の資料が出てきました。当方は仏教美術が専門で、この方面は門外漢でよく解りません。研究に役立つかどうか、全く解りませんが、宜しければ寄付いたします。と言うもの。私は、しばらく、胸の高まり躍るのを抑えるのに大変だった。

●『ホームズ翻訳への道――延原謙評伝』の著者・中西裕氏は、研究の途上で、まったく面識の無い加島氏に資料に関する質問を郵送したら、氏から延原謙関係資料が一杯詰まったりんご箱が届いて、足が震える思いがした、と記しておられる。

●「どうぞお持ち下さい。」鹿島神宮宮司家の『可笑記』の書誌調査を終えて辞去しようとする私に、鹿島則幸氏はこのように申された。「この葉書、御手許へ届いた日から、万治刊の『可笑記』は、貴兄の所有にして下さい。贈呈します。」横山重先生はこのような葉書を下さった。「深沢クン、あの『可笑記』は返さなくていいよ、結婚祝いに上げよう。」長澤規矩也先生は、そう仰って無刊記本を下さった。

●いずれも、中西氏の書かれているように、研究者にとっては、足が震えるような、感動的な出来事である。鎌倉の古美術商の方は、ネットで鈴木重嶺を検索して、私にたどり着いたとも記しておられる。このような、人の真心に接する時、地味な研究を継続していて、本当に良かったと思い、感謝の念がふつふつとわきあがる。

■■晩年の鈴木重嶺
私は、佐渡奉行所での講演の帰途、列車の中で、この写真を見ていて、重嶺の伝記研究を決意した。