西ケ谷恭弘著 『江戸城―その全容と歴史―』

●西ケ谷恭弘氏の『江戸城―その全容と歴史―』を購入した。A5判のムックで、たくさんの写真やイラスト入りで、定価2500円、東京堂出版、2009年9月30日発行。カバーには、

「新出・新発見の絵図や古写真を多数掲載! ページを開くたび、あざやかによみがえる、これまでにない江戸城の姿!」とある。

●早速、開いて見て、本当に多くの事を教えてくれる内容である。著者の長い研究の蓄積が、この啓蒙書に惜しげもなく盛込まれている。あの有名な二重橋でも、このように反対側から見る写真は、余り見かけない。石垣1つ取ってみても、このように、細部に目を向けて解説する本は少ない。私は、石垣の石の刻印について、初めて教えて頂いた。日本の歴史において、武士は築城に情熱を傾けた。作事奉行・普請奉行などがあり、大石奉行・栗石奉行などもあったと、どこかで読んだことがある。城の石垣など、運搬から、石の回転まで計算して定位置に据えるとも聞き齧ってはいる。しかし、1つ1つの石に、産地や切り出した人の符号があるとは知らなかった。

●『井関隆子日記』に、家慶夫人の葬儀の折に、棺は、梅林門から平河御門を通って上野東叡山へ進んだ、という記述があり、私は、江戸城の現地に行って調べた。現在は、大した坂とも思えないが、当時は、上梅林門から下梅林門まで、かなりの落差であったのであろう。この梅林門に関しても、本書では詳細な解説があり、読者は納得することになる。労著・快著である。

■■西ケ谷恭弘著 『江戸城―その全容と歴史―』

■■二重橋 皇居前広場から見る

■■二重橋 的場曲輪内から見る

■■すだれ懸 の施された石垣