加藤裕一氏の 『上田秋成の思想と文学』

●加藤裕一氏の『上田秋成の思想と文学』が出た(2009年10月30日、笠間書院発行、7500円+税)。オビに、
国学思想にとどまらず、俳諧、和歌、和文など、さまざまな新たな視点と時代把握から、秋成の創作方法や思想を捉え直し、いまだ知られざる作品世界を提示。」
とある。

●加藤氏は、2008年2月27日、『上田秋成の紀行文 研究と注解』(実践女子学園学術・教育研究草書 15)を公刊された。秋成の紀行『秋山記』『去年の枝折』『岩橋の記』などを取り上げた詳細な注釈と研究であった。

●今度の著書は、まだ、途中までしか読んでいないが、秋成の国学思想を解明し、それとの関わりで、作品論を組み立てている点に新鮮さを感じた。実は、近代に入って研究され始めた秋成であるが、まず、『雨月物語』が取り上げられ、続いて『春雨物語』が論じられ、浮世草子の諸作品が論じられ、秋成研究はもう研究され尽くされた、というような感じさえ受けるのが、現状のようにも見える。

●しかし、意外と、取り残された部分もあるのではないか、門外漢の私の感想では、そんな気がしている。その点、加藤氏の研究は、既に雑誌に発表されていたものではあるが、このように単行本になって、読んでみると、共感する点が多い。

●加藤氏は、卒論で「上田秋成研究―「白峯」論を中心に―」を320枚提出し、審査は尾形仂先生だったという。私の卒論は仮名草子の「『可笑記』論」で182枚であった。加藤氏の御努力が目に見えるようである。私の指導教授は重友毅先生であった。卒論諮問の折、君には大学院では秋成をやってもらいたい、と言われた。私は、大学院へ進んだら、秋成の国学関係を徹底的に解明したいと密かに考えていた。重友ゼミで『雨月物語』を学んだ時、そこが手薄だと思ったからである。そんな点からも、この度の加藤氏の著書は嬉しい内容であった。付言すると、私は、事情があって、大学院へ進めなくなり、卒論の仮名草子研究を続けることになったが、上田秋成は大好きな作者である。

★本書の詳細目次 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm
■■加藤裕一著『上田秋成の思想と文学』