長谷川 卓 の新作 『明屋敷番始末 北町奉行捕物控』

●長谷川卓の最新作、書下ろし『明屋敷番始末 北町奉行捕物控』が出た(2009年9月18日、角川春樹事務所発行、ハルキ文庫、定価648円+税)。

「手柄を立て、伊賀者の地位を上げられるような大戦がなくなってから久しい。我ら伊賀者は子々孫々まで三十俵三人扶持で我慢するしかない・・・・・・」
一人の伊賀者が貧困の末に病に果てたことをきっかけに、明屋敷番の有志たちが決起した。財のあり余っている大名家や旗本家から金子を盗みだし、それを伊賀者に分け与えるというものだった。当初、順調にいっていた盗みだったが、ある晩に、人を殺めてしまう。鷲津軍兵衛率いる北町奉行所と忍びを極めた伊賀者たちとの苛烈なる闘いが始まる・・・・・・。書き下ろしで贈る大好評シリーズ、第七弾。(カバー より)

●上手いなー、と思わず口をついて出てしまう。長谷川卓の小説の面白さは、豊富な知識と、群を抜く文章力、それに、一作一作に籠められたアイデアであろう。私は「明屋敷番(あけやしきばん)」のタイトルを見て、うなってしまった。

●時は、安永6年(1777)2月17日、赤坂御門と虎之御門の間の氷川明神の近所に明屋敷があったという。1年前までは、越後の国、榊原家・15万石の屋敷だったが、屋敷替えとなって、以後は、明屋敷番がこの千坪の屋敷を警備をしているという。これだけで、明屋敷の意味も分かるし、読者は物語の中に入ってゆける。小説とは、有り難いものだと思う。

■■長谷川 卓『明屋敷番始末 北町奉行捕物控』