祝す 『近世文学研究』 創刊

●『近世文学研究』という雑誌が創刊された。かつて、近世初期文芸研究会で、近世初期俳諧仮名草子を私と一緒に研究していた、島本昌一氏を中心にして立ち上げた「文学史探究の会」が発行母体である。『近世初期文芸』よりも一回り小さいA5判の雑誌であるが、私よりも年配の島本氏が、新しい雑誌を出された事に、心からの敬意と、祝福を捧げたい。

「創刊のことば               文学史探究の会
 いずれの時代でも同じであろうが、研究は進めば進むほど、細分化
される。この過程は引き返す事はできないであろう。しかし、そのため
か同じ分野の研究であると思いながらも、対話が失われてきているよう
に思われてならない。さまざまな分野の研究者が一堂に会し、交流を
深める場がほしいと思う。
 とりわけ、近世文学はそれ以前の古典と明治以後の近代を繋ぐ問題
に充ちた世界である。研究誌を創刊するゆえんである。
 といっても、性急に巨視的展望を開くことを意図してはいない。まず
はお互に作品の読み方を学び会うことから始めていきたいと思う。
そうして出来る事ならば共同の研究や調査を工夫していきたい。
                            2009 ・ 7・ 11 記」

●この雑誌の創刊の意図は、ここに示されている。日本文芸史における、古代や中世文芸と、明治以降の近代文芸の間にある近世文芸を通して、上下の接続関係を文学史的に解明しようとして発足した研究会のように推測される。大きな構想で敬服する。

●発行所は「獺祭堂」という。何やら正岡子規の号・獺祭書屋と関連しているのであろうか。そういえば、和田克司氏の「藤野古白と正岡子規」という論考が掲載されている。何はともあれ、高齢にもかかわらず、学問的情熱をもって、新しい雑誌を出された島本氏に対し、心からの敬意を表する。さらに、この雑誌が、所謂、3号雑誌に終わる事無く、日本文学史を解明する上で、大きな発言の場となるように、切に念じ申し上げる。

●雑誌は創刊は易く、継続は難い。さらに、創刊の目標を達成することは至難のことである。この雑誌に期待し、発展を望んでやまない。
★『近世文学研究』創刊号の詳細目次→http://www.ksskbg.com/kanabun/news2.html

■■『近世文学研究』 創刊号