影印本・4

●また、長い研究生活の中には、こんな事もあった。鹿島神宮第66代大宮司鹿島則孝には『桜斎随筆』という膨大な編著書がある。幕末維新に関する貴重な資料であった。それは、54巻60冊、3500丁という大部なものであった。私は、則孝自筆の貴重な資料を何とか後世へ伝えたいと苦心した。しかし、現在の出版情勢では、全7000頁の刊行は容易ではなかった。出合いから刊行までには、10年間の年月を要した。

●平成12年、本の友社の御厚意でようやく出版の運びとなったが、原寸複製で全18巻に編集した。この本も影印本であるが、写真複写で原稿を作成するのではなく、最上質紙を使用して複写機で作成する事になった。私は、この原稿作成のために、コピーセンターで様々な検討をした結果、リコーの複写機、IMAGIO−MF2230をリースで導入した。本当は、写真複写が望ましいが、厳しい出版事情にあって、これが次善の策であった。それでも、限定50部発行という事である。

●則孝の自筆の原本をいかに再現するか。毎日毎日、コピーと原本を比較して、筆のカスレやヨゴレをチェックして原稿を作成した。これは実にシンドイ仕事であった。しかし、則孝の記録する事への情熱や、その歴史的価値を思うと、1丁、1行、1字たりとも、疎かにする事は出来ない。また、購入する図書館としても、厳しい予算の中から36万円を支出するのであり、何十年か後には、研究者に閲覧・利用される資料である。そんな事を思いながら、3年間をかけて完結させた。ハタから見れば、安易な影印本に思えるかも知れないが、当事者としては、こんな思いも込めている影印本もあるという事である。

■■ 鹿島則孝『桜斎随筆』の原本 現在は、鹿島神宮宮司・鹿島則良氏所蔵

■■ 影印複製本 平成12年(2000)〜14年、本の友社発行

■■第1冊目 巻頭の「はしがき」明治20年、則孝75歳

■■ 男女髪の沿革 巻12