江戸の天然痘

●今、メキシコを震源とする豚インフルエンザが世界を騒がせている。WHOは警戒レベルをフェーズ3から4に引き上げた。○人―人の感染が地域レベルで続く、○世界的大流行の可能性は中〜高程度、という。現在、日本での感染者は出ていないが、成田空港での入国者チェックは物々しい。早く終息して欲しい。

氏家幹人氏の『江戸の病』(2009年4月10日、講談社発行、1600円+税)が出た。江戸時代の病気の様々な様子を伝えていて興味深い本である。巻末に掲げられた『官府御沙汰略記』の28年間にわたる記録は貴重だ。特に子供達の死亡の原因の多くが天然痘ウイルスによるものだという。これは一幕臣の家の28年間の記録だというが、38例のうち10例で、当時の10歳未満の子供達が天然痘の犠牲になっていたことは顕著であると指摘しておられる。

●私は、かつて、井関隆子の調査の折、昌清寺の過去帳で子供の早世が多く、御住職の服部仙順氏に質問したところ、原因は痘瘡だと教えて頂いた。井関家でも隆子の孫の親賢の次男が、天保7年(1836)4月9日に4歳で死亡し、長男は天保11年4月6日に感染したが、これは助かった。現在のようにワクチンもなくタミフルも無かったので、ウイルスの蔓延するに任せ、家々では痘瘡(もがさ)の神を祀って平癒を祈ったらしい。隆子の家でも次男の時は、この神を祀って祈ったが治らなかったので、長男の時は効果もないだろうと祀らなかったが、一命は取り止めた、と記している。

氏家幹人著『江戸の病』の詳細目次→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■氏家幹人著『江戸の病』