著作権 2題 その2

お茶の水女子大学の市古夏生氏を研究代表者とする『出版機構の進化と原稿料についての総合的研究』の研究成果報告書が発行された。この研究のキーワードは、「原稿料(潤筆料)、印税、出版権(版権)、著作権、出版機構」に設定して進められたという。これまで、漠然と、あるいは個別的に、研究され論じられてきたテーマを客観的に総合的に取り上げた画期的な研究だと思う。

●日本の出版は、近世から特に活発になり、著者と出版社の関係が問題になっている。元禄の西鶴や、後期の馬琴など、絵師との関係も含めて、出版者と著者との関連は、複雑な様相を呈している。その研究も多くの先達によって進められてきたが、今回の研究によって、多くの事が明らかになろうとしている。しかも、時代的には、近世から近代、現代までを取り上げて、データの収集をしている。7点の論文を納めているが、巻末に収録された「原稿料史年表稿――17世紀〜20世紀――」は有益なデータである。これは、データが膨大で、調査結果の4分の1に止めたと言う。これらの中の1項目からだけでも、実に多くの事を知る事が出来て、そこから、日本の出版文化の実体に迫るヒントが得られる。

★本研究成果報告書の詳細→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■『出版機構の進化と原稿料についての総合的研究』(平成21年3月発行)