自然を観る目―古代ギリシア人と日本人

●真下英信氏著『古代ギリシア史論拾遺』(A5判、362頁、2008年2月6日発行、非売品)が刊行された。

 第1部 論考  (3頁〜202頁) 
第1章 クレールキア
第2章 初期アテーナイの植民活動
第3章 ホメロスの空間表象について
第4章 ギリシアの勤勉農民 ◆ヘシオドス『仕事と日』から
第5章 地中海の植民者たち
第6章 ツキディデスの -sis, -ma 名詞の用法
第7章 伝クセノポン『アテーナイの国制』とアリストテレス
第8章 Ps. Xen.AP2.7の■■■について
第9章 アリストイレスのアイシュムネーテス像について
第10章 古代ギリシアにおける呪い管見
第11章 古代ギリシア人の風景描写について
     ――平安朝日記文学を手掛かりに――
第12章 補注:国家を船に喩える比喩について

 第2部 書評  (203頁〜344頁)
21点の洋書の書評。詳細は省略。

●大変な労著だと思う。門外漢の私には、はじめから読んでみたが理解できないところが多い。第11章は大変興味深い内容であった。著者は論文の冒頭で結論を述べておられる。

(1) 日本人と同じく古代ギリシア人には風景それ自体に興味を持って描写するというよりも、人が表現しようとする対象を説明する手段として風景描写を利用する傾向があった。しかし、古代ギリシア人には風景を客体として凝視する態度の萌芽が早くから認められる。

(2) 日本人は目前の風景を客観的あるいは写実的に描写する手法を発達させなかったが、古代ギリシア人はその術に長けていた。

●真下氏は、以下で、この結論を詳細に、比較分析して論じておられる。拝読して、この論文から、日本文学に表現された、自然描写、自然観など、多くのことを学ぶことが出来た。

■■真下英信氏著『古代ギリシア史論拾遺』