「謝辞」 を読む

中西裕氏の『ホームズ翻訳への道――延原謙評伝』(2009年2月10日、日本古書通信社発行、2500円+税)が発行された。目次は見たが、まだ、全体を読んではいない。巻末の「延原謙著作目録稿」は40頁に及ぶ労作。評伝を支える諸文献の注記は290点である。

●巻末の「謝辞」を読んだ。著者は小学生の頃から『シャーロック・ホームズの冒険』の愛読者であり、やがて翻訳者・延原謙にめぐり合い、その評伝を纏め上げるに至る。これだけの評伝を書き上げるには、多くの時間と多くの人々の学恩や協力がなければ不可能である。私は、中西氏の「謝辞」を読みながら、延原謙の伝記の1つの事実に出合って、小躍りせんばかりの文章の背後を思って、感動した。

●一人の人間の伝記をまとめるのは、まさに、そのような、事実の発見の積み重ねであろう。戸籍謄本はプライバシーの問題があるからと、引き下がっていては、伝記は書けない。延原謙の自筆原稿の詰まった箱が送られてきた時の、著者の驚愕と感動の様子が、目に見えるようである。

●私は、仮名草子作者の伝記研究の調査に山形へ出かける。この度の、中西裕氏の労作を車中の友にしたい。中西先生、御苦労様でした。御出版、おめでとうございます。

★★『ホームズ翻訳への道――延原謙評伝』の詳細→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■『ホームズ翻訳への道――延原謙評伝』