片岡千恵蔵 

●菊池氏は子供の頃、片岡千恵蔵のファンであったという(→いろいろエッセー)。35年生れの私にとって、映画は娯楽の王様で、毎週毎週、村に1軒の映画館で映画を観て育った。私も片岡千恵蔵は大好きな俳優であった。

●私は、中学から高校へかけてカメラに熱中した。自分は安いカメラしか持てなかったが、カメラクラブの大人たちから、テッサー付きのドレスデンやライカコンタックスニコンなどを借りて撮っていた。

●家の広い土間(コンクリート)に1坪半位の暗室を造った。暗室は自分で設計して大工さんに依頼した。ベンチレーターも木で造ってもらった。電気・水道を引き、引伸機は冨士のB型、レンズはエル・ニッコール。いくら良いカメラで撮っても、引伸しのレンズのランクが低いとまずい。私が入って戸を閉めると、外には「使用中」の赤いランプが点いた。ここで、フィルム現像から印画紙への引伸しまでやった。

●引伸しは、半切まではできたが、全紙はできなかった。大部分がキャビネと四つ切だった。仕上がり具合は、経験と勘が頼りで、ハイエストライトからディープシャドーまで、白黒の階調がキチンと出ていなければならない。現像・停止・定着・水洗の各バットを並べた正面のテーブルの壁には、四つ切の片岡千恵蔵のブロマイドが貼られている。見事な仕上がりの写真で、私は、この知恵蔵の写真の、それぞれの部分の階調と比較しながら仕上げた。

片岡千恵蔵の映画は、『一本刀土俵入』『宮本武蔵』『三本指の男』『赤穂浪士』『多羅尾伴内』『大菩薩峠』などたくさん観ているが、暗室での付き合いも長くて、忘れられない俳優である。