中国文化と日本、朝鮮半島の役割

●清水邦一氏の友人の労作、韓国語訳『漢字の世界』を手にして思うことがある。有史以来、日本は、中国の大きな文化を吸収して成長してきた。私は平成6年、昭和女子大学の皆さんと2週間ほど中国旅行をした。中国各地の歴史的文化に直に接し、そのスケールの大きさに驚愕した。日本などは、中国文化の前では、まるで子供のように思えた。

●碑林の石碑ひとつとっても大変なものである。日本で一枚でもあれば、重文クラスと思われるものが、何と1095基も保存されていた。837年〜1091年に、中国全土から集められたというのだから、その規模の大きさが分かる。私は、1枚1枚見学して、その時の感動は、今もはっきり心の中に残っている。

●この膨大で長大な文化が日本の至近距離にあった。そうして、これらの偉大な文化は日本に伝来して、多くの恵みを受けた。にも関わらず、日本は、この膨大な文化に飲み込まれる事なく、日本独自の文化を育んできた。それは、数度にわたる中国の侵略が成功しなかった事にも由来するだろう。しかし、それと、もう1つ、朝鮮半島の役割が大きかったように思う。

漢籍の日本への伝来を調べていて、確か、前間氏の『古鮮冊譜』という本だったと思うが、漢籍が朝鮮を経由して伝来している事を教えられた。朝鮮版というのもあった。膨大な中国の文化が朝鮮半島を経由して、少しずつ、細々と伝来したことで、日本は、異国の文化を消化して摂取することが出来たのではないか、そんなふうに思った。

●日本は、明治維新後も、ヨーロッパ文明を、上手く消化して取り入れたようである。これは、他の東南アジア諸国とは異なると思う。それが、現在の日本を世界に知らしめているように思うのだが、どうだろうか。