如儡子の『堪忍記』

如儡子の『堪忍記』は、仮名草子の中で有名な浅井了意の『堪忍記』とは別の本である。いずれも写本で、福井県立図書館の松平文庫本と、内閣文庫の和学講談所本・昌平坂学問所本の3点が現存する。

●全国110の藩を収録しており、各藩の、知行高・姓名・藩名、物成(収入)・米払いの良否・年貢率・国役・江戸詰の良否・家中の気風・主君の善悪等について記している。成立は正保元年(1644)頃と思われる。

●米払ひも所も良し。しはき仕置き也。悪しき主人、下々の下。諸侍心易き家中、中也。諸侍望みの家也。米払い悪し、下也。遠国ゆへ中也。物事大きに悪し、下也。父の御代より少しは良し。江戸詰悪し、下也。箱根御番しげし、中也。万事堪忍なるよし、上也。万歳々々、上々也。主悪し、下也。渡り者は望まず、大方中也・・・。こんな、歯に衣着せぬ寸評が付されている。

●各藩主に対する、このような厳しい批評は、他の「大名評判記」にはみられないものであり、批判精神の強い仮名草子作者、如儡子の面目躍如たるものがある。私は、いずれ、『如儡子(斎藤親盛)の研究』の中に組み入れようと考えている。