私の日本出版文化史

印刷博物館の展示を拝見して、触発されるものが沢山あった。実は、私は昭和女子大学の国文・日文の学生対象に日本出版文化史の講座を開設していた。日本の出版文化の歴史のテキストは適当なものが無かった。文化史や出版史や印刷史はあったが、私の望むような出版文化史は無かった。従って、私は自分で、日本の古代から現代までの出版文化史の資料を作成して講義していた。

●私は、印刷技術・出版者・出版社・作者・読者・出版物(実用書・自然科学・文学などなど)を意識的に分離して年表を作って、それを基にして講義した。試行錯誤もあって、受講生には申し訳ない点も多々あったが、そうして、目標へ近づけたいと計画した。しかし、これは、途中で頓挫した。

●私の試案による、近代出版文化史の時期区分は、次のようなものであった。
① 明治前期―著者中心の啓蒙時代・明治元年(1868)〜19年間
② 明治中期―出版企業確立の時代①・明治20年(1887)〜15年間
③ 明治後期〜大正前期―出版企業確立の時代②・明治35年(1902)〜19
  年間
④ 大正末期〜昭和初期―予約物・円本文庫の時代・大正10年(1921)〜1
  4年間 
⑤ 昭和中期―言論弾圧の時代・昭和10年(1935)〜10年間
⑥ 昭和後期・現代①・自由と禁圧の時代・昭和20年(1945)〜15年間
⑦ 昭和末期・現代②・高度成長と出版不況の時代・昭和35年(1960)〜2
  0年間
⑧ 昭和末期〜平成・現代③・ニューメディアの時代・昭和55年(1980)〜
  現在まで

●その後の変化をみると、インターネットの普及が著しく、これへの対応に出版が追いついていない状況がある。