鈴木重嶺と松平春嶽

●昨日は、かねて依頼していた資料を閲覧・調査するため昭和女子大学の図書館へ行った。目的は、鈴木重嶺の『翠園叢書』巻五である。この巻には、『むらさきのゆかり』『新撰月百首』『よつの時の行かひ』『西城新殿歌』等が収録されている。1996年(平成8年)2月、鈴木重嶺の御子孫から、昭和女子大学へ寄贈され、最初の仮目録は私が作った。研究室に全資料を保管して、原物から直接書誌をワープロで記録した。今日、再調査したら、丁数など間違いが無かった。集中はしていたけれど、心をこめて記録したかと言われると、心もとない。

●実は、幕末・維新期の、越前福井藩主、松平慶永・春嶽が、この重嶺の『翠園叢書』を借りて書写している。福井市立郷土歴史博物館にその書写本が所蔵されているのである。表紙には越前和紙・飛雲を使用した美術品といっても良い製本。春嶽は明治17年に鈴木重嶺から借りて書写したらしい。この両者の書写関連を調べたいと思う。春嶽は明治3年一切の官職を辞し、以後文筆生活を送り、明治23年に63歳で没している。

鈴木重嶺は、勝海舟とも深い親交があったが、福井藩主・松平春嶽や、平戸藩主・松浦詮とも交流があった。昭和女子大学には重嶺宛、松浦詮書簡も所蔵されている。鈴木重嶺・松浦詮の関連も調べたいと思う。昭和女子大の図書館の担当者には、いつもお世話になって、感謝している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
福井市立郷土歴史博物館→〒910-0004 福井県福井市宝永3丁目12-1
TEL:0776-21-0489

松平春嶽 愛蔵の品々 − 越前和紙 −』
 越前は五箇村地方(現今立郡今立町)を中心に、古来わが国第一の高品質和紙生産地として重要な地位を占めてきた。中世以来、朝倉氏や織田信長豊臣秀吉結城秀康らは、いずれも入国後ただちに五箇村地方の紙座に保護を加え、良質の鳥の子紙や奉書紙の供給を確保した。そうした越前特産の和紙の中には、打雲・水玉・飛雲・墨流しなどとよばれる美しい模様の漉紙があって、今日にもその技術が伝えられている。
 ここに展示したのは、春嶽やその一族が使用した歌書等の表紙に用いられている越前模様漉かけ紙で、いずれも当代一級の技術水準を示している。
■■『翠園叢書』巻5の書写本の写真がある。

■■『蓬園月次歌集』松浦詮 編 (FUAKI蔵)

鈴木重嶺の跋文 翠園 77歳