『ビブリア』 木村三四吾先生追悼

天理図書館から『ビブリア』130号(平成20年10月)が届いた。この号は、本年4月に92歳で御他界なされた、木村三四吾先生を偲ぶ号となった。巻頭に、諸井慶一郎・天理図書館館長をはじめ、生前の木村先生と親交のあった方々の追悼の文が掲載されて、誌を挙げて先生を追悼している。

●いずれの追悼文も、生前の木村先生を悼み、しみじみとしたものであるが、特に末尾に配された、金子和正先生の「木村三四吾先生を憶う」には心うたれる。金子先生は、昭和24年に木村先生の助手となり、まず、変体仮名の読み方から指導されたという。常に木村先生の側にあり、古典籍の扱い、調査・考察を学び、諸方面への講演にもお供をされて、補助の役目を果たされたという。普通、助手と言えば、若い頃のポストであり、やがて独立して巣立つ、これが通例であろう。しかし、金子先生は、木村先生の全生涯にわたって、その側にあって、学び、かつ補助してこられたのである。それは60年間に及ぶものである。金子先生は、木村先生の生涯とともにあった。これが、心を打つのである。

●私が、木村先生とお近づきになれたのも、金子先生の御蔭である。天理図書館で、また、東京の天理ギャラリで、更に郵便を通じて、いかに多くの事をお導き頂いたことか。「實事求是」の学問の真髄も教えて頂いた。先生の御著書も殆ど頂いている。

●私は、篆刻家・冨樫省艸氏によくして頂き、私家版『省艸印譜』限定30部を刊行した。冨樫氏に無理のお願いをして、1部を木村先生に献呈した。関西へはこの1部しか贈っていない。木村先生は、印譜・蔵書印に関しても造詣が深く、天理図書館の膨大な古典籍の蔵書印を解明されている。この木村先生に是非とも見て頂きたかった。先生への、私の思いである。

■『ビブリア』第130号、平成20年10月

■『木村三四吾著作集 4 資料篇』平成12年12月15日、八木書店発行

■『省艸印譜』平成4年12月12日、同刊行会発行。
この印譜集の印陰は、全て、中国・西玲印社の印泥による手押しである。