宮澤照恵著 『『西鶴諸国はなし』の研究』刊行

●宮澤照恵氏の『『西鶴諸国はなし』の研究』が刊行された(2015年3月25日、和泉書院発行、定価13500円+税)。本書の内容は、次に掲げる目次の通りである。また、出版社のHPには、次の如く書かれている。
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西鶴諸国はなし』を多面的総合的に捉え、本作品が小説家西鶴の最も原初的な創作原理と方法とを含む咄の本であると位置付ける。まず書誌形態から版下の成立を論じ、明瞭に形態上の差異が認められる四章があること、そのうちの一話は咄の原初形態を再現する内容を持ち三話は構想・方法共に軽口ウソ咄を意図していること、更に四話は共にウソ絵を配することを明らかにし、この四話が『西鶴諸国はなし』を纏める際の核となった可能性を提示する。個々の作品論では、それぞれの素材を解明した上で、意外なものを取り合わせる着想のエネルギーや素材からの飛躍を論じ、西鶴のたくらみを炙り出すと共に新たな読みの可能性を追究する。作品研究の綴じ糸として「諸本書誌」・「綜覧」・「挿絵」・「研究史」・「資料」を配し、全体を俯瞰しつつ原質に及ぶ。こうした本書の基礎的かつ実証的な成果は、今後の『西鶴諸国はなし』研究の礎石となり、作品の豊かさを掘り下げる契機となろう。
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目  次
はじめに 

第一部 基礎的研究
 第一章 諸本調査報告―先後と版行状況― 
第二章 綜覧―成立論・方法論への手掛かりとして― 
   付表1 三五話の梗概 
   付表2 『西鶴諸国はなし』縦覧 

第二部 構想と成立試論
 第一章 書誌形態から見えてくるもの 
第二章 巻四「力なしの大仏」論―『大下馬』の原質(一)― 
 第三章 巻三「行末の宝舟」論―『大下馬』の原質(二)― 
 第四章 巻四「鯉のちらし紋」論―『大下馬』の原質(三)― 
 第五章 巻三「八畳敷の蓮の葉」論―『大下馬』の原質(四)―  
 第六章 挿絵と作画意識―「風俗画、怪異・説話画」と「戯画」と―
 終章  「構想と成立試論」に向けて 

第三部 咄の創作―構想と方法―
 第一章 巻一「大晦日はあはぬ算用」考 
 第二章 巻一「見せぬ所は女大工」考 
 第三章 巻五「楽の差かな●(魚+摩)●(魚+古)の手」考 
 第四章 巻二「楽の男地蔵」考 

第四部 研究史と課題
 第一章 戦後の研究史概観 
 第二章 戦前の研究史(1)―一九四五年(昭和20年)
             以前の作品評価― 
 第三章 戦前の研究史(2)―一九四五年(昭和20年)
             以前の語彙考証と典拠研究―
 第四章 戦前の研究史(3)―一九四五年(昭和20年)
             以前の俳文意識― 
 付 章 研究論文・資料年譜―一八六九年(明治2年)以降― 

第五部 参看資料
 一 西鶴本 
 二 古典籍資料 
 三 『盗賊配分金銀之辨 全』解題と翻刻 

あとがき 
索引 
図版一覧
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★詳細 → 近世初期文芸→新刊案内(近世文学・その他)http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm
●本書をはじめから読んだけれど、精読ではないけれど、私は圧倒されたり、感激したり、快い疲労を感じた。老齢化したからではない。第1部第1章の「諸本調査報告――先後と版行状況――」には感激した。版本であるから、仮名草子西鶴も同じである。私の仮名草子可笑記』の手法と相通う。元禄文学の第一人者西鶴の作品だから、『一代男』『五人女』だけではなく、全作品が、このように吟味されなければならない。私は、そんな風に思う。典拠論も勉強になった。近世初期の仮名草子から始まった、古典の摂取は、啓蒙期の特色であろうが、西鶴はそこから、近世の文学を創りだしたのだろう。本書は、研究史もあり、参考文献も完備し、『西鶴諸国はなし大観』だと思った。労作である。
■宮澤照恵著 『『西鶴諸国はなし』の研究』