大輪靖宏氏の近著『芭蕉創作法と『おくのほそ道』』

●大輪靖宏氏の近著『芭蕉創作法と『おくのほそ道』』が刊行された(平成26年12月5日、本阿弥書店発行、2600円+税)。大輪氏は、上田秋成の研究者である。その後、芭蕉研究にも範囲を拡げられ、さらに、現代俳句の実作、研究の分野でも活躍されている。今度、出された著書の概略は次の通りである。
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目  次

第一部 芭蕉に学ぶ創作法
 第一章 芭蕉の言葉に学ぶ
 第二章 芭蕉の言葉や句をもとに俳句のさまざまを考える
 第三章 芭蕉の句の状況の作り方
 第四章 芭蕉の色彩感覚
 第五章 芭蕉から考える俳文の可能性
   
第二部 『おくのほそ道』における芭蕉の試み
 第一章 『おくのほそ道』における芭蕉の意図
 第二章 『おくのほそ道』における句の種々相
 第三章 『おくのほそ道』の文章
 第四章 『おくのほそ道』における曾良の句の役割
   
 あとがき 
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●現在、俳句を創る人々にも読めるように、文章は易しく書かれているが、内容は精緻で、芭蕉俳諧、『おくのほそ道』の根本の部分に関して論及されているように思う。1つの句の解釈にしても、解り易く、その真髄を指摘され、本当の意味を教えてくれる。
●私は、大学では、『おくのほそ道』も『猿蓑』も講読し、講義してきたが、私自身、芭蕉俳諧に関しては、殆ど書いた事が無い。芭蕉俳諧に関しては、研究者人口も多く、それだけに、詳細・精緻な研究が多くて、私など、ペンを執る気になれなかった。
●この度の、大輪氏の著書は、実際に俳句を創り、指導し、その立場から、芭蕉俳諧の創作過程を分析し、御自分の論を展開されている。それだけに、教えて貰うことが多い。
第1部、第5章は、俳文についての考察と提案である。俳文とは何か、現代における俳文、これからの俳文。

「こういう素晴らしい文芸形態を捨て去ってしまうのは惜しい。そもそも日本の韻文は、歌でも句でも場の中に生きるということが大切で、どのように場の中に生きたのかを示すものが詞書なのだ。その詞書を今あらためて新しい俳文と名付けて、生かしたいのだ。俳文と名付ければ、従来の詞書以上に長く状況を描くことも可能になる。
 芭蕉が俳文を作り出したのは新しい試みであった。今度はまた、さらに新しい試みとして現代の俳文という独自の文芸形態を作り、句と文との融合した世界を創造したいものだ。」

★本書の詳細 →http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm
■大輪靖宏氏『芭蕉創作法と『おくのほそ道』』