蔵田茂樹の 『恵美草』

佐渡歌人、蔵田茂樹が、佐渡の年中行事を書き留めた『恵美草』がある。この著作は何と読むのだろう。
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恵美草(ゑみそう)

相川の年中行事を記述した蔵田茂樹の著作。最初「鄙の手振」と題したが、京都の師、加茂季鷹に示したところ「ゑらとわらふ手ぶりは天さかるひなに残れり笑ふてぶりは」の歌を添えてきたので、恵美草と改題したとされている。文政十三年(一八三○)三月の作で自序と、季鷹の跋があり、江戸時代には公刊されることがなく、写本で流布した。国会図書館・東京都立中央図書館桜山文庫(鹿島則幸氏蔵)、佐渡の舟崎文庫などに、数種類の写本で残っている。さし絵は石井文海(一本に中川鉄斉とある)とされ「左義長」「春駒」「塩釜社の田舎あやつり」(人形)「盆踊り」「善知鳥社の祭り」(鬼太鼓)の五葉が載っている。化政期の相川の芸能や民俗をふりかえる上で貴重で、千疂敷の舟遊び、風の宮社の花火、十月のハタハタ漁、師走の虎魚(ハリセンボ)、物乞いして歩く節季女郎など、ひなびた風俗も紹介されている。国会図書館本の末尾には「天保十三年三月写之、みなもとのたか子」とある。これは天保十年(一八三九)に江戸城への金銀上納で上京した茂樹が、歌会の席で旗本の妻の井関隆子と知り合い、そのおり隆子が恵美草を借りて前後二回にわたって筆写し、同書が江戸でも流布することになる。これをきっかけにこの女性と茂樹の文通は、生涯続いた。

【関連】鄙の手振(ひなのてふり)・蔵田茂樹(くらたしげき)
【参考文献】深沢秋男「井関隆子研究覚え書」(『文学研究』)ほか
【執筆者】本間寅雄
(相川町史編纂委員会編『佐渡相川郷土史事典』より)
 【ネット より 引用】
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●『佐渡相川郷土史事典』は、平成14年9月30日の発行。佐渡を研究する上で貴重な文献である。また、執筆者の本間寅雄先生は、佐渡研究の第一人者で、私も多くの御指導を賜った。ただ、この「恵美草」の読み方は「えみそう」で良いのだろうか。
●私は、井関隆子と蔵田茂樹の関連で、この本を調べたことがある。この本は写本として伝わり、諸本もかなり伝存している。私は、国立国会図書館本、昭和女子大学図書館・桜山文庫本、都立中央図書館め加賀文庫本、西尾市立図書館・岩瀬文庫本、無窮会・神習文庫本、佐渡高校・舟崎文庫本(3点)、などを調査している。この中で、都立中央図書館・加賀文庫本の表紙には「恵美くさ」とある。私は、今日まで「えみぐさ」と読んできた。
■『佐渡相川郷土史事典』