詩誌 『黒豹』 第135号 発行

●詩誌『黒豹』第135号が発行された(平成26年3月30日、黒豹社発行)。

黒豹135号目次
巻頭
尼崎 安四・・・竹
竹内勝太郎・・・風
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諌川 正臣・・・土筆  虫の宴
よしだおさむ・・浮標(ブイ)
前原  武・・・石亀の死  静かないのちⅡ
富田 和夫・・・アヴィニョンの女たち
杉浦 将江・・・編む  包まれて
本間 義人・・・大巌院  勇者
庄司  進・・・そんなのあるか  枇杷の花
森  雪拾・・・船影  雪ふる夜
中地  中・・・なごみ

編集後記

●編集発行人は諌川正臣氏。発行所は、千葉県館山市上真倉1832−10。私は、同郷の詩人・佐野千穂子氏の紹介でこの詩誌にめぐりあった。大学の友人・松本靖氏との関係で、偉大な詩人・尼崎安四を知る事になった。この雑誌の編集発行人・諌川正臣氏は尼崎安四の直弟子である。私はこの雑誌で、竹内勝太郎という詩論家・詩人を知った。竹内は、1935年に他界している。私の生まれた年である。人生は短し、芸術は長し、である。
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風      竹内勝太郎(一九三五・没)

風が逞ましい雄辯を以て木々に物語り、
日が無慈悲な歯を当てて氷河を噛む、
稲妻は無限の暗を切り裂き
何ものも見えぬ空間の根強く焦げる匂ひがする。

なんとわかり難い言葉だ、この無類の早口と吃音(どもり)とは、
人間に話しかけようともせず押しのける、
風は他のあらゆる自然の声を運ぶ報道者、
山や丘や森だけがそれをはっきりとのみこむ。

だが人間の耳は風のない風を無限に捕へ、
絶対の空間が微塵にくだける金剛石(デイアマン)の破片(かけら)の一つ一つを聞き分ける、
宇宙の意志の暴風、風の風、
人間こそ風だ、何ものにも関らず風は吹く。
                   (一九三四年十月二十三日)
                  ―創元社版・詩集黒豹より―
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●何と鋭い、人間と自然への眼差しであろうか。
■『黒豹』 第135号