中世文学と近世文学の境界

國學院大學の共同研究、『「文化現象としての源平盛衰記」研究――文芸・絵画・言吾・歴史を総合して――』第4集が発行された(平成26年3月31日 発行)。中世文学の代表作品『源平盛衰記』の単なる作品研究ではなく、その作品を核として展開された文化の総合的な研究である。
●この研究成果の一つとして、『頼朝軍物語』が伊藤慎吾氏によって紹介されている。江戸前期に大坂で刊行された絵入の物語。内容は『源平盛衰記』の部分的な抜粋・改変された作品だと言う。いずれ、伊藤氏によって詳細な研究が発表されるものと思うが、この作品は、中世文学と近世文学の関連を考える上でも、貴重な存在であろう。
●近世文学の散文の初発は仮名草子である。中世の御伽草子との関連が問題になる。1つの作品をめぐって、それが、中世の御伽草子なのか、近世の仮名草子なのか。『仮名草子集成』の朝倉治彦氏は、横山重氏の『室町時代物語大成』との抵触は避けるという方針であるが、近世に成立した御伽草子作品は検討したいとされた。文学作品の時代的定着は複雑な要素が関係してむつかしい。
●この度、紹介された『頼朝軍物語』は、中世の『源平盛衰記』と関連があり、その版元の関係から、古浄瑠璃との関係も考えなければならないようである。伊藤氏の研究を参照して、その、文学史的位置づけをしなければならない。それにしても、貴重な作品が紹介されたことに感謝する。
★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/ 「近世文学関係ニュース」
■『「文化現象としての源平盛衰記」研究』