藤圭子という歌手

●昨日の朝日新聞天声人語で、過日自殺した、歌手、藤圭子を取り上げていた。
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藤圭子さんの醒めた目
 子どものころに何度も聞いた流行歌は、いまも耳から離れない。8月に自殺した藤圭子さんの「夢は夜ひらく」もそうだ。♪夜咲くネオンは嘘(うそ)の花 夜飛ぶ蝶々(ちょうちょ)も嘘の花……。倦怠(けんたい)という言葉を知らぬまま倦怠感を刷り込まれた記憶がある▼その歌を「怨歌(えんか)」と称され、「陰」のイメージの濃い藤さんは実は冷徹なプロ意識の持ち主だった。作家の沢木耕太郎さんの近刊『流星(りゅうせい)ひとつ』で知り、感銘を受けた。79年にいったん引退を表明した直後のインタビューの記録である▼藤さんはふだんから自分の声を「貯(た)めて」いた。「人とおしゃべりする声があったら、歌う声に残しておきたかったから」だ。だから周りからは無口だと思われた。それほど大切にしていた声をあるとき、ある理由で失うことになる▼聴衆は気にとめなくても、本人には別人の声としか思えなかった。「喉(のど)に声が一度引っ掛かって、それからようやく出ていくとこ」が美点だったのに、引っ掛かりがなくなり、声が澄んでしまったのだ。それから5年は何とか歌ったが、限界がきた▼自分の力量を分析する醒(さ)めきった目に驚く。ひとたび頂上に登った者は、転げ落ちるか、低くてもいいから別の頂に跳び移るしかない。ゆっくり降りるなんてことはできない。そう考えた藤さんはどこかに跳び移ろうとしたのだが……▼昨今、忘年会の巷(ちまた)で怨歌を耳にすることはあまりない。沢木さんによる手向けの花を味読しつつ、藤さんの気だるい歌声を思い出すことにする。
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●私の妻も藤圭子に興味を持っていた。ノンフィクション作家の沢木耕太郎氏は、優れた作家だと思うが、その沢木氏の『流星ひとつ』を早速購入して読み、いたく感激していた。
●実は、私は、歌謡曲に余り興味が無く、藤圭子の歌も少ししか聞いた事が無い。しかし、今年、新宿のマンションから飛び降り自殺した時に、たまたまテレビで放送された、彼女の話を聞いて、驚いた。生前の録画であるが、この放送を聞いていて、この歌手は、頭の良い人だと感激した。並の人ではない、そう思った。話題は、ケネディ空港で大金を所持していて、密輸と間違えられた時のことや、現在活躍している歌手たちの歌唱力に関してのことであったが、実に、見事なコメントであった。
藤圭子  ネット より