電子書籍の出版権

朝日新聞によると、文化庁電子書籍の出版権に関して、1つの方向を示したという。これは、従来の出版社にとっては重要な問題で、ネットが普及したから、電子書籍の参入をしやすくする、そのような観点からだけ強調されても困る。出版は編集者がいて、著者を発掘し、原稿依頼をし、原稿を吟味し、時として著者を育てて、装丁も考え、発行部数も定価設定も考慮し、そうして書籍として発行する。ライトノベルのような、お手軽な出版物を基準にされては困る。そんなふうに、私は思う。
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電子書籍にも「出版権」 文化庁方針、海賊版対策
2013年12月20日12時00分
 【藤井裕介】文化庁は20日、電子書籍海賊版対策や適正な流通のために検討してきた「電子出版権」を、紙の本を対象にした現在の「出版権」の範囲を広げる形で組み込む方針を固めた。来年の通常国会に出版権を定める著作権法の改正案を提出する。成立すれば、今の著作権法ができて以来、44年ぶりに出版を巡る権利が見直されることになる。
 著作権法は、出版社が作家ら著作権者と契約し「文書または図画」で作品を独占的に発行できる出版権を定めているが、電子書籍は含まれない。文化審議会の出版関連小委員会が、5月から、電子出版権の創設を検討してきた。
 小委では、大手出版社などが「電子出版権を紙とは別の出版社が持つと、海賊版対策はできない」と紙と電子を一体とする、現在の出版権の範囲の拡大を求めた。「作品を作るのに出版社もコストをかける。『電子は別の出版社』となったら何のための苦労か」という考えもある。
 一方、経団連などは、紙の出版権を持たない出版社の参入を促すため、電子書籍だけの出版権を設けるよう求めた。
 文化庁は、「紙と電子を一体とする制度でも、契約で紙だけ、電子だけという対応もできる」と判断。小委も20日、「紙と電子の権利が一体的に設定されていくことが想定される」とする最終報告書案を了承した。
朝日新聞デジタル】  より
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●私は、昭和45年(1970)の頃、出版社の辞典部で実用国語辞典の編集責任者だった。その辞典の編集製作費は、約1億円だった。今から40年の余も前のことである。これだけの巨費を動かして良い辞典を作る。寝食も忘れて取り組むのが編集者であり、それを許すのが出版者である。この時の、出版契約書での出版権は、1年間増刷が無ければ、効力を失う、という厳しいものだった。
●私は、昭和53年(1978)に『井関隆子日記』を勉誠社から出版した。この時の、出版契約書での出版権に関しては、出版者・原本所有者・校注者の三者の合意を要する、と記されている。出版者を守ろうとする意図である。