研究の不正防止

●今日の朝日新聞の科学のコーナーで、最近問題になった、iPS細胞に関して虚偽の発表をした森口尚史氏に関連して、自然科学界の論文捏造、盗用などの問題を取り上げている。自然科学は、理論と実験の研究から、新しい事実や真理を追究して、レベルアップを目標にしている。超伝導の研究の時など、世界的にリアルタイムで、その先後を競った。今度、ノーベル賞を受賞した中山氏の研究プロセスを伺っても、その地道な姿勢に感動する。

●そのような、気の遠くなるような実験を繰り返し、得られた事実の上に、さらに理論を重ねて、次のレベルへと進む。これは大変なことである。そこで、他人の実験データや論文を盗用したり、実験結果の捏造などをして、自分の論文の数を増やしたくなる。ワシントン大学などが発表した調査結果によると、医学・生物学分野で撤回された論文、2047本のうち、捏造などの研究不正やその疑いのあるものが43.4%だという。また、不正論文の国別本数では、アメリカ、ドイツに続いて日本が3番目だという。残念なことである。

●このような、研究不正は、自然科学の分野に限ったことではない。私の専攻している文学の分野では、さらにルーズのように思う。私は、学生の卒論指導の時など、まず、その主題の研究水準の確認をし、自説と他説を峻別しなさい、と説明した。私が、早くから「仮名草子研究文献目録」の作成に努めたのは、この点を考慮してのことでもある。

■研究不正 どう防ぐ  朝日新聞 11月22日