前田金五郎氏 『思い出雑記帳』 刊行

●前田金五郎先生の近著『思い出雑記帳』が勉誠出版から刊行された。オビには「近世語研究に生涯をかけた筆者の記録」とある。A5判700余頁の大冊である。前田先生は、勉誠出版だけでも『西鶴大矢数注釈』(全4巻)・『好色五人女全注釈』・『好色一代女全注釈』・『西鶴語彙新考』・『西鶴発句注釈』・『西鶴連句注釈』・『近世文学雑考』・『近世文学雑記帳』を出版しておられる。

●本書の「一 書物雑記」の中の「潁原退蔵著・尾形仂編『江戸時代語辞典』読後感・寸評」は、私の編集している『近世初期文芸』第27号(平成22年)に執筆して頂いた労作である。この「書物雑記」に収める論考は31編、貴重な指摘がたくさん収められている。

●「二 続 思い出雑記」では、横山重先生との交流の様子が、丁寧に、詳細に記録されていている。お二人の関係は、私が想像していたよりも、もっともっと深いもので、前田先生の研究生活の中で、横山先生の存在は重要なものであったことがわかった。また、法政大学の近藤忠義先生を取り上げておられる。前田先生は近藤先生と、1度もお会いしてはいないが、近藤先生の著書や論文に、大変影響されたと述べておられる。私は、法政で、近藤先生の御指導を頂いたが、思えば、やはり、著書や論文から学んだ事が多かったと思う。

●前田先生の、昭和27年から昭和36年の日記は、大変魅力的なものである。昭和36年の年頭の所感には、次のようにある。

 一、『古語辞典』の原稿を今年中に整備。
 一、版本を広く読み、語彙カードに採る。
 一、語彙考証の論文を出来るだけ書く。
 一、京大図書館・柿衛文庫本を一度は見に行くこと。

●このように、毎年、計画を立てて、1日1日を研究と教育に努めておられる。私は、昨夜、おそくまで、この御著書を拝読し、前田先生の研究生活の様子を拝察し、いつまでも眠れなかった。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■前田金五郎先生の近著『思い出雑記帳』