歌詠みの友

●今朝、甲州のぶどう という宅急便が届いた。小学校の同級生の佐野さんからであった。私の実家の3軒め隣の家。小学生の頃は、よく一緒に宿題などをした。佐野さんは、私と違って優等生で、いつも勉強を教えてもらった。夏休みの宿題の絵の時、同じ風景を2人で描いて出したら、2人とも貼り出された。友達からは、一緒に描いたろう、とからかわれて困った事を思い出す。

●佐野さんは、俳句も創るし、短歌も詠んで、山梨日日新聞にもよく掲載されている。若宮貞次先生主宰の短歌雑誌『あかね』の同人でもある。9月発行の、第28巻第5号にも作品が掲載されている。

 里に来てトマトキュウリ食べちらし尻をふりふり逃げゆく猿は
 母言ひぬ「伊沼の土はねんど土雨にも晴れにも泣かされて来ぬ」
 物忘れはげしくなりしわが夫一日の出発朝茶汲みいる
 梅雨の中母の実家の墓参り無事に終えたり坂道下る
 幸せの六十五年か逝し人の遺影しづかにほゝえんで居る

●佐野さんの、現在の生活が、そのまま、一首になっている。私が小学生の頃は、猿など、動物園へ行かなければ見られなかった。故郷は、過疎化の波で、動物と共生する場となった。佐野さんのお母さんにも、大変お世話になった。六十五歳で他界した人は、私の姪であり、佐野さんは、姪の親代りをしてくれた。御主人の汲んでくれたお茶を2人で飲んで、今日も始まる。

甲州ぶどう と短歌雑誌『あかね』