文芸評論家、梶木剛氏の思い出

●梶木剛氏の新著『文学的思考の振幅』が発刊された(2012年8月20日、深夜叢書社発行、定価3000円+税)。新著と言っても、梶木氏は、2010年5月に他界されている。73歳の若さだった。没後、著書が刊行されたのは、奥様の篤い思いと、出版社など関係者の御配慮があってのことである。物書きとしての梶木氏は幸せ者だと思う。

●新著『文学的思考の振幅』の目次を見て、改めて梶木氏の視野の広さを痛感せずにいられない。第1章の照葉樹林関連の評論は圧巻である。殊にトップの「衝撃、照葉樹林の発見」は書下ろし絶筆だという。流石に、病魔と闘いながらも、これを執筆したのか、と思うと、氏の執念にも近い情熱が伝わってくる。中尾佐助氏の稲作研究に関しては、生前、酒を酌み交しながら、たくさんのことを教えて頂いた。その後、中尾氏の、朝日選書『分類の発想』に出会って、それこそ衝撃を受けた。これも、梶木氏の導きかと、深く感謝している。

●思い出せば、梶木氏とは、よく外国へも行った。10回くらいは行っている。ドイツ、フランス、オーストリアギリシャ、スペイン、チェコインドネシア、中国、韓国、私は、ただ、付いて行くのみだけれど、梶木氏は事前に調査して、充実した旅にしていた。また、飛行機の中でも歌を詠み、ホテルではヒマを見て、印象・所感を書いていた。私よりも2歳下なのに、教えて頂いたことの方が多い。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■梶木剛氏の新著『文学的思考の振幅』

■在りし日の梶木剛氏

ギリシャ古代オリンピック競技場で。左端

■千葉幕張にて。右端