俳句雑誌 『■(木+若)』(SUHAWE) 10周年を祝す

上智大学の大輪靖宏先生が創刊し、指導されてきた俳句の同人誌『■(木+若)』(すはゑ)の第10号が発行された(2012年7月1日発行)。31人の俳句が各20句収録されている。年刊であるから、10年の創作活動の成果という事になる。創刊号は未見であるが、大輪先生を中心として研鑽し、輪を広げてきた姿がここに表現されていることになる。私は、自分の経験から、何となく、ものごとは、その主題に取り組んで、10年を経れば、光が燈るような気がしている。

●『■(木+若)』第10号を拝読して、やはり、そう思う。ただ、所謂、一般の俳句の同人誌と異なるのは、一人一人が、自由に句作に取り組んでいることである。上田秋成の研究者でもある大輪先生は、秋成と同様に、御自分の考え方や方法を押し付けてはいない。先生は「あとがき」で、秋成の『異本胆大小心録』の「独学固陋・・・」の一節を引かれて、その指導の姿勢を示しておられる。

○大輪靖宏
春雪の山深閑と日が昇る
野を焼いて里人夕餉へと帰る
啓蟄の路地子供らのけんけんぱ
○鈴木貞雄
梅蕾も空の青さも硬かりし
森暗め降る雪建国記念の日
新しく描かれ泣き継ぐ涅槃変
○大島等閑
路線バス待つ束の間の背に冬日
寒柝や角曲り来る小提灯
餅花を何気に飾り老舗かな
井上泰至
春立つや水源に汲む人の列
ひそめあふ息吸ひつくし春の闇
地震の間の日のさへづりの急調子

●各人が、思い思いに、日常の一こまを、それぞれの感覚で切り取り、短詩型に定着している。
とにかく、10周年、おめでとうございます。

●『■(木+若)』(SUHAWE) 第10号