音響実験用模型製作

●久し振りに、海老原氏から電話があった。蕎麦を食べることを「たぐる」と言いますか、という質問。周りの辞書を調べたが、これというコタエは出なかった。ところで、今、どんな仕事をしているの、と聞いたら、コンサートホールの音響実験用模型の製作をしています、とのこと。人見記念講堂や上野文化会館などのホールのですか? と聞くと、そうだと言う。永田音響設計の仕事を手伝っていて、その通信に、次のような文章を書いていた。
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コンサートホール音響実験用模型製作の回想――その3
生き残った模型 (新日鉄紀尾井ホール)1993年6月〜9月
 この仕事をしていると「響きの良いホールって具体的にどんなホールですか」と聞かれて困る時があります。私共は音響実験のための器を造っているだけであり、音や響きといった抽象的な物に関しては門外漢なのですから…。あえて言えば席に座って演奏中に目を閉じたとき、実際の視覚より一回り大きな音場を感じるような、「豊か」と表現したら良いのでしょうか、演奏者と一体となったその音色に柔らかく包み込まれるようなそんなホールが個人的には好きです、とお答えしております。
 溜息のような弦の震えも手に取るように響く、紀尾井ホールはそんなホールです。(海老原信之)
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●何でも、これまで、20件ほどのホールの模型を手がけてきたという。この数は業界ではトップクラスだという。実は、海老原氏は、私の甥である。祖父は宮大工、父も数奇屋大工で、父から手ほどきを受けたという。小さい頃から遊んだり、勉強を教えてやった、あの子供が、このような世界で活躍しているのか、そう思うと誇らしくなる。

新日鉄紀尾井ホール の音響実験用模型

紀尾井ホール