山田潔著 『日本文法学の系譜』 発刊

●山田潔先生の近著『日本文法学の系譜』が発行された(2012年1月11日、昭和女子大学 近代文化研究所発行、定価800円+税)。同研究所の、「ブックレット 近代文化研究所叢書 8」として刊行された。山田先生は、現在、近代文化研究所の所長の重責をも担っておられる。

●『日本文法学の系譜』は、「あとがき」によると、2011年度の、昭和女子大学大学院、日本文学専攻、言語教育・コミュニケーション専攻での講義に基づいているという。毎回の講義は、前半、山田先生が概要を説明し、後半で、受講生の質問を受けるという形式で進められ、その結果、加筆すべき点は加筆して成ったのが本書であると言う。

●本書は、日本の文法学の系譜を整理するに当たって、山田孝雄時枝誠記渡辺実・三上章の4名の文法論を採り上げて論じ、解説している。全部拝読した訳ではないが、この目次を見ただけでも、アウトラインは了解できる仕組みになっている。山田先生は毎日、大学へ出るのが早い。いつも、研究室でパソコンに向かって論文を執筆しておられた。その成果は優れた論文として、次々に発表された。本書もそのような研鑽の成果であろうと思う。

●実は、私が昭和女子大学短期大学部の国文科に採用された最初の年度、必修の国文法を講義した。使用したテキストは、渡辺実氏のものであった。1年間、講義ノートを作るのに大変だった。短大1年生に、どのような国文法を教えるか。私は、まず、学校文法の解体から始めた。古典文法を踏まえた現代文法を教えようとした。単なる解釈文法ではなく、短大・学部・大学院と進む学生の事も考慮した。自分で、用例を作るのに一晩かかったこともあった。国語学の専攻と間違えた学生の質問に応じるだけでも往生したことを思い出す。

●その時、中央公論社から出ていた、北原保雄氏の文法論『日本語の世界6.日本語の文法』には感激した記憶がある。それから30年近く経過しているが、どうなっているか、専門外の私にはわからない。とにかく、このように優れた講義を受講できる、昭和女子大学の大学院の学生は幸せであろう。

★本書の詳細 → http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■山田潔著 『日本文法学の系譜』