アマゾン 上陸

●昨年7月に、アメリカ、アマゾンの通販サイトでの電子書籍の販売冊数が、ハードカバーを抜いたと言われた。アマゾンの通販サイトでは、63万タイトルの電子書籍をそろえている。上半期の電子書籍の売上げは、昨年の3倍以上らしい。アマゾンは、自社の端末キンドルだけでなく、アップルのアイパッド向けにも電子書籍を販売している。当時1ヶ月の売れ行きは、ハードカバーの1.8倍に達していたという。アメリカの出版社協会によると、昨年5月の電子書籍の売上高は、前年同月の約2.6倍だという。

●今日の、朝日新聞によれば、アマゾンの日本での販売時期について明らかにしていないというが、そう遠くは無いだろう。アマゾンが日本の出版社側に示した契約書によると、電子書籍の販売価格の最終的決定権をアマゾンが持つということのようである。書籍の定価の決定は、出版社は様々な条件を計算し、予測して決めてきた。1064頁の辞典が980円という事もある。276頁の学術書が17500円という事もある。出版社は、その本の内容と読者対象を考慮して定価を決めている。

●ところが、アマゾンなどの電子書籍の販売社は、自分では著者も発掘せず、編集も印刷も製本もせず、出来上がった作品を、電子的処理をして利益を追求している。ここに、従来の販売ルートと販売意識が全く異なるところがあるだろう。だから、販売価格はこちらで決める、などと言い出すことになる。しかし、優秀な企画者・編集者がいて、良いセンスのデザイナーがいて、良い本を生み出している崇高な職業、出版界も、この、電子書籍の荒波に対処せずにはいられない。書籍も野菜や米や洋服と同じように、量販店の濁流の中を流されてゆくのだろう。

朝日新聞 11月8日