オリジナル資料の処置

●今日の朝日新聞によると、日本考古学協会の蔵書は約56000冊あるが、その保管・管理に困っているという。同協会の蔵書は千葉県の市川考古博物館に寄託しているが、年間の蔵書の利用者は数人に止まるという状態。また、この10年間ほどの間に同協会に寄贈された図書などは、所沢市の倉庫に段ボール箱に詰められて眠っているという。そこで、協会は寄贈先を公募したが、国内では応募が無く、イギリスのセインズベリー日本芸術研究所に寄贈することになったという。会員の1人は、「日本の底の浅さを感じる」とコメントしている。その通りだと、私も思う。

日本考古学協会は1948年(昭和23年)創立で、創立と同時に刊行されている『日本考古学年報』は、日本の考古学の動向を記録した貴重なものだと思う。私は、誠文堂新光社の辞典部にいた頃、隣の教育部門出版部で『日本考古学年報』を出していた。もちろん、編集は協会であろうが、出版は誠文堂新光社だった。私も折々、拝見させてもらったが、素晴らしい内容の年鑑だった。その後、吉川弘文館に移り、現在も継続刊行されていると思う。

●現在、資料のデジタル化が進み、オリジナル資料が軽く評価される傾向にあると思う。そんな中で、フランス国立図書館がオリジナル資料の重視を打ち出して動いているのは、すごいと思う。

●余談・・・ 私は定年の時、研究室の蔵書を整理して、岩波の新古典大系全100巻をはじめ、約1000冊を中国の上海交通大学に寄贈し、若い研究者に古典文庫全冊を寄贈したが、後に、やや、ハヤマッタリ、の思いをしている。

■10月11日、朝日新聞