『黒豹 KURO HYO』 NO.124 

●『黒豹 KURO HYO』NO.124 を頂いた。巻頭に尼崎安四の『蛇の死』が載っている。諫川正臣氏の編集後記を読んで、詩人・尼崎安四の凄まじい創作意欲を推測して感激した。尼崎の家の前には掘割があり、いつも清冽な水が流れていたという。尼崎と諫川氏はその堀割を流れる蛇の死骸を見たように記憶するという。その目撃がもとになって『蛇の死』は作られたという。詩稿のノートは、諫川氏が拝見するたびに、書き直されて、完成までに1年間をかけて、ノートは1冊半になっていたという。

●推敲という言葉がある。唐の詩人、賈島が「僧推月下門」の詩を作った時、「推す」にするか「敲く」にするか苦しんだという故事によって、詩や文章を作る時、その字句や表現を、何度も何度も練り直すことをいう。私は、諫川氏の、この話を伺って、詩人が、短い詩の中で使う、一つの言葉にかける想いや意気込みや、純化の様を教えられた気がする。

●最近の、人々の文章は、ワープロ的である、とよく言われる。いかにも平板で、わかりやすく、トゲの無い、そんな文章が横行している。私も、原稿用紙→ワープロ→パソコン、と執筆形態が変った。ただ、私は、専用のプリンターで、フンダンにプリントして、書き直す。平均10回、多い時は15回は、推敲して、トゲを挿入するようにしている。

●ついでに言えば、この日記は、無推敲である。行き当たりばったりの記録である。その時、その時の事実を書いている。これは、自分の日々の記録である。故に、これを読んだ方は、私の生活の事実の一部を知る事は出来る。しかし、それは一部であり、全てではない。事実を書いているが、事実の一部であり、私の生き方の全ては伺えない。そのように、仕組まれている。乞う、御了承。

■『黒豹 KURO HYO』NO.124
  平成22年7月30日発行